【コラム】長時間労働・過労死・ハラスメント対応における証拠収集のポイント

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近時、長時間労働を理由に過労自殺が生じたり、様々なハラスメントが社会問題化していることから、今回のコラムでは、長時間労働やハラスメント事案における事実認定やデジタルフォレンジックを活用した効果的な証拠収集のポイントなどについて解説していきます。

1.企業における長時間労働及びハラスメント対応の実情

(1)長時間労働について

前提として、まず、平時においては、労務管理を行う部署で従業員の労働時間を適切に管理・把握し、残業過多を解消するための措置を講ずる必要があります。

一方で、有事には、

  • 内部通報などを通じて記録がされていないサービス残業があるとの申告を受ける
  • 従業員から訴訟などで残業代請求を受ける
  • 労働時間の過多を理由として過労死を招いたり、うつ病などの精神疾患に罹患したりしたことなどを理由とした労災申請を受ける

といったことが起こり得ます。

これらの場合、企業の立場としては、まず、事実確認が必要であることに加え、裁判や労災の調査との関係では、証拠をもって、長時間労働を否定することができるかが重要になります。

もっとも、実際の裁判などの場面では、主に証拠不足が原因で、必ずしも企業が把握している通りの事実が認定されない場合もあります。

例えば、労働時間の認定について、労災や裁判実務では、労働者側からタイムカードや入退館記録などにより一定の立証がなされてしまうと、これを覆す別の客観証拠が無い限り、企業側の反証は認めてもらえないことが多いです。

また、リモートワークの普及により、稼働していない時間が労働時間として記録されてしまうリスクも増しており、実際、タイムカード上の記録では深夜までの時間外労働が記録されている一方で、

例えば、

  • (ある日は)夕食のために離席した時間が長時間にわたっている
  • 就業時間中にSNSやネット動画の視聴を行っている

などの事情を立証できたとしても、長時間の離席が1日だけであったり、SNS投稿が一部見つかったり、という程度では、労働時間の認定を大幅に減らすことはできません。

また、メールなどを手作業でさかのぼることによる客観証拠の収集も、そのような作業がリソースの観点から難しく、企業側で立証活動を断念するケースもあります。このように、長時間労働がないことを立証するのは困難な側面もあるのが実情です。

そこで、デジタルフォレジンックを活用して、従業員が申告した残業時間と実際の残業時間が異なることを立証するために、パソコンの起動時間のみならず、Webサイトへのアクセス履歴、アクセス時間やパソコン内の各アプリケーションの起動ログ、各ファイルの編集履歴についても相関的に分析・調査することが可能となります。

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(2)ハラスメント対応について

ハラスメントは、密室で行われることが多いため、その行為の存在が被害者の供述、又は、録音などの証拠によって裏付けられることが通常です。

もっとも、実際にハラスメントがあったか否かが争われるケースにおいて、ハラスメントが行われた時点の社員間のやり取りのみではなく、社員間の継続的な関係をデジタル証拠を踏まえて事案を分析すると、被害者の供述や録音から推認される事案とは違った事実関係が見えてくることがあります。

例えば、パワハラが問題となるケースでは、パワハラに該当する叱責行為の録音が証拠の決め手となりますが、パワハラであると主張される発言について、録音がなく、パワハラを受けたと主張する社員の供述が唯一の証拠であり、しかもパワハラをしたとされる上司の供述と真っ向から食い違うことがしばしばあります。

この場合には、どちらの供述が、実際に体験した者でなければ語ることのできないほど具体的で、迫真性に富んでいるかという観点から、供述の信用性を判断します。

このように、ハラスメントの調査対応の場面でも、特にハラスメント行為についての供述のみに依拠することなく、前後の経緯や背景事実などについてデジタル証拠に基づく事実認定を行う必要性は極めて高いと考えられます。

そこで、デジタルフォレジンックを活用して、ハラスメントが問題となるケースでは、特定の従業員同士で行われたメールなどのやり取りの中から、ハラスメントが行われているメールを抽出する作業を行うことがしばしばあります。

デジタルフォレンジックにより、従業員が削除してしまったメールやファイルの復元を行いつつ、関連するドキュメントをレビューし仕分けるための専用ツール(レビュープラットフォームと言います。)を利用することで、特定のワードを含むメールやオフィスファイルの抽出、一定の宛先のメールアドレスとのやり取りを効率良く一覧化して抽出することが可能になります。

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2.証拠収集におけるデジタルフォレンジックの活用等

以上のように、効率的な証拠収集とその選別のための証拠収集の場面では、当事者の供述のみならず、デジタルフォレンジックを活用することが重要となります。

これらのデジタルフォレジンックの技術やツールは、実際に紛争などが表面化した有事に活用することが特に有用です。近時は、多くの企業でコンプライアンス意識が向上し、長時間労働やハラスメントについて適切な対応を行う取り組みがなされています。

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一方で、証拠収集や、事実調査の不備により、企業として不本意な結果を招いてしまうケースも少なくないため、コンプライアンス体制の構築の次のステップとしては、デジタルフォレンジックの活用も視野に入れた、企業としての対応精度の向上を目指していくべきだと考えています。

TMIP&Sでは、長時間労働(過労死)やハラスメント事案が発生した際のフォレンジック調査をはじめ、これらを検知・防止するための平時のフォレンジック調査も可能ですので、お気軽にご相談ください。