鈴木翔平先生、TMI総合法律事務所パートナー弁護士就任記念インタビュー
今回のコラムは、TMIP&S代表の大井先生が、2024年1月にTMI総合法律事務所のパートナー弁護士に就任された鈴木翔平先生にインタビューをした内容です。
鈴木翔平先生、TMI総合法律事務所のパートナー弁護士に就任
今日はゲストをお呼びしてます。実はTMIP&Sの役員でも執行役員でもないんですけれども(笑)
一緒にデータ利活用サービスのアドバイスをしている鈴木翔平先生をお呼びしております。先生どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
鈴木 翔平 氏
詳細なプロフィール、専門領域はこちらからご覧ください。
今日のテーマなんですけれども、鈴木先生が2024年1月にTMI総合法律事務所のパートナーに就任したということもあってですね。お祝いも兼ねて動画を回しております。
鈴木先生は、大井と一緒に案件をやっていることが多いと思いますが、主にどんな案件が多いでしょうか?
私が大井先生と一緒に対応している案件だと、やはりデータ利活用のお仕事というのは多いですね。デジタルマーケティング関連ですとか、あるいはプライバシーガバナンス体制の構築の案件をよく一緒にお仕事させていただいていると思います。
私一人でやる仕事としては、海外データ保護法やオンラインサービス企業についての案件を多く取り扱っています。
またITやデータ領域のイメージが強いかもしれませんが、他にも投資案件やM&A案件も私の業務分野です。
鈴木弁護士の専門分野
主にIT企業のデータ利活用だったり、M&Aが専門領域になりますかね?
そうですね。M&A案件も業界としてはIT系が多くて、プロジェクトマネジメントをやることもあれば、法務DDで、データの部分を専門に見たりという業務でチームに入っています。
法律の領域としては個人情報保護法ということになりますか?
そうですね。個人情報保護法がメインですけど、オンラインサービスを展開している企業に法務アドバイスをしていくと、個人情報保護法以外にも気をつけるべき法律というのはありまして、特定電子メール法、景品表示法、電気通信事業法、資金決済法などについても専門にしています。
データ保護、IT領域、AIを弁護士としての専門にした経緯
鈴木先生がデータ保護やITなどを専門領域にされたきっかけはありますか?
実はTMI総合法律事務所に入った直後は、M&Aや投資案件をメインにしてました。エクイティ・ファイナンス、M&A、投資の案件に多く関与していて、会社法や金融商品取引法を見たりしていました。
他にも上場会社ですと、適時開示が必要かどうか確認して、ドラフトしたり、そういったような仕事が入所後3年くらいは多かったですね。その後、少しずつ個人情報保護のお仕事が増えてきまして。
IT企業に出向させていただく機会もあり、現在はデータ利活用やオンラインサービス方面の仕事というのが大半を占めている状況になっています。
最初の専門分野は、入所した時に自分で希望を出したんですか?
そうですね。M&Aについては、希望を出しました。
TMI総合法律事務所は、ローテーションで様々な仕事を経験する期間があるので、その間にファンドとか投資案件というのが面白いと思って、取り組んだのが最初の3年間くらいでした。
最初の3年くらいの時に、個人情報保護法領域とか個人情報保護法チームはありましたか?
その当時は、まだ無かった気がします。
個人情報保護法の案件をやっている先生がちらほらいたと言う感じで、チームを作って取り組むイメージでは無かったですね。
個人情報保護法が成立・施行された時期で、弁護士であれば専門領域に関わらず、誰もが個人情報保護法を取り扱っているという状況だったかと思います。
そうですよね!
個人情報保護の案件だから「この先生」に依頼しようという感じではなくて、ジェネラルコーポレートの一環として取り扱っていた時代ですよね。
もうかれこれ10年くらい前の話になりますけど。
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プライバシー、データ保護領域の「今」
だから弁護士たるもの、例えば会社法とか個人情報保護法は、とりあえずは企業法務と一環としてはやるべき領域だった印象ですね。
しかし、今はまた様変わりしているイメージはないですか?
ものすごく複雑化していますよね。
個人情報保護法自体も複雑化していますし、海外データ保護法への対応も必要になってます。さらにデータ利活用のやり方についても、いろんなサービスが出てきていて、技術面も複雑になっているので、ジェネラルコーポレートの中の一つとして、弁護士なら誰でも扱うというのは難しい領域になってきている印象があります。
なんで法律自体が難しくなってきたんですかね?
なんでですかね(笑)
やっぱり継ぎ足し継ぎ足しでやっているところがあると思っていまして。個人情報保護法で足りていない部分を後から部分的にカバーしていますよね。具体的な事件があったりして、この部分は問題だよねと共通認識になると、まずそこだけカバーしようとするみたいな形で対応してきた結果、定義が難しくなって、少し例を挙げるだけでも「個人情報」「個人関連情報」「仮名加工情報」「匿名加工情報」みたいに増えていって複雑化したと思いますね。
無理だと思いますが、一度、更地にして作り直したら、もっとシンプルになると思います。事情があるので簡単な話ではないですが。
また、先ほどの鈴木先生のお話にあったように技術面も複雑化してきていますよね。
技術面の複雑化に関しては、データ利活用の中でもデジタルマーケティングの分野で特に強く感じいますね。
今でこそ「AI」が世間を賑わせてますけど、デジタルマーケティングの分野では、AIのような技術が以前から使われていますよね。例えば、人の興味関心を分析してターゲティングするなど、非常に先進的な技術が常に導入されています。
データの流れも複雑で、そういった部分の知識がそもそも法律家側になかったので、なかなかアドバイスもできない。企業の法務部も事業部が言ってることがよく分からない。
しっかりアドバイスをするためには、技術的な仕組みを理解しないといけないわけですが、そこが高いハードルになっていますよね。
だから専門性があって、技術面やビジネスの中身まで理解している法律家が重宝されていくと考えています。
ここからはデジタルマーケティングと弁護士業務というところで、ぐっとマニアックな話に入りたいと思います。
デジタルマーケティングのビジネスの仕組みって非常にわかりにくくて難解で、しかも次々に新しい技術が登場して・・・
例えば今ですと我々はCookieのデータを取り扱っていますけど、今年(2024年)の後半には、3rd party Cookieの廃止が予定されています。
じゃあ、それに対してどう個人情報保護法を対応していくかなど論点がどんどん移り変わっているわけですけど、弁護士としてどのようにサービスをキャッチアップすべきか悩ましいと思います。
鈴木先生は、どのようにして新技術やサービスをキャッチアップするべきだと思いますか?
まずは、現在のサービスについて知るところから始めるしかないと思うんですよね。
サービスがどのような仕組みでデータのやり取りを行なっているのかを理解する。
たしかに新しい技術は出てきてますが、今までの技術を全く無視して革新的なサービスが出てくるわけではないので、今までの経緯を知っていると、「ここはこういう仕組みなんだな」とある程度わかる。プラスアルファで「ここが今回は新しいんだ」と理解していく。
やっぱり長い間の積み重ねですね。デジタルマーケティング業界に身を置いて、案件を対応しながらOJTを永遠に続けていくしかないと思っています。
このチャンネルの動画は、司法試験受験生の方や、これから弁護士の専門領域を極めていこうと言う方もご覧になっているのですが、よくご質問いただくのが「どの本を読んだら、個人情報保護法やデジタルマーケティング、IT周りの知識がつくか?」なんですが、鈴木先生のおすすめはありますか?
ちょっと宣伝みたいになっちゃいますけど(笑)
TMI総合法律事務所から出ている「プライバシーポリシー作成のポイント」という本があります。
まだ公表していませんが、Cookieポリシーに関する本も出版予定です。こちらは、法律面だけでなく技術面についても詳しく解説予定なので、出版されたら是非ご覧ください。
ただ、やっぱり本を読むだけだとサービスの理解としては不十分だと思います。本を読むことに加えて、そのサービスを提供している事業者のウェブサイトも確認すると、より理解が深まると思います。
書籍紹介
最新の個人情報保護法、各種ガイドライン等に対応したひな型を逐条解説。GDPR、米国、中国などのグローバルな法規制もフォロー。事業の特性に応じた記載ぶりを検討する1冊。
弁護士が最新のテクノロジーをキャッチアップするには
そうするといかにデジタルマーケティングのプレーヤー(事業者)と近い距離にいるかというのは、専門性を身につける上で重要なポイントになりますね。
その通りだと思います。
ただ、それはデジタルマーケティングやプライバシーの分野だけに留まらず、どの分野の弁護士でも法律に詳しいだけじゃなくて、法律を当てはめるべき対象(事業者やサービス)にどれだけ詳しくなれるかが重要だと思っています。
そのために自分の法律の範囲内に留まらずにWebサイトや本で知識を得るだとか、あるいは実際に業界の方と人的なコネクションを作って、お話を聞いてみることがキャリアを作っていく上で重要だと思いますし、私も実行していかないといけないと考えています。
その点、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングの株式会社としての箱が、すごく有効に活きていると思いますね。
例えば私どもTMIP&Sと事業提携してる企業は、広告代理店だったり、あとは鈴木先生と案件をご一緒したLiveRampさんが典型ですけれども、統合IDをサービスとして提供してるデジタルマーケティング領域のプレーヤー企業がTMIP&Sとコラボレーションをする中で、サービスの仕組み作りだったり、新サービスの設計構築について我々も触れられるというのは非常に大きな経験ですね。
では、このデジタルマーケティングやデータ、IT領域の専門性を深めていく中で、パートナー弁護士になって働き方など今後変わっていくことはありますでしょうか?
パートナー弁護士としての今後
急に変わることはないと思うんですけど、アソシエイトとしてご依頼頂いている仕事をクオリティ高く、できるだけ早くこなしていくところから、今後は自分で外に出て行ってTMI総合法律事務所ならこれができるとアピールしていきながら、コネクションを作っていく立場になったので、今まで通りコツコツと知識・経験を積み重ねるのと同時に対外的な活動も積極的にやりたいと思っています。
今後は、ご自身の領域をより専門特化していくのか、それともM&A、コーポレートまたはデータ、さらに裁判・紛争など領域を広げていく方向性なのか、どのように考えていますか?
そこは非常に難しいところですね。
専門特化すべきところは特化していくことになりますが、お客様の中から求められるものがあれば、そこはある程度広くやっていくつもりです。
ただ、私が急に裁判メインに扱うことにはならないと思います。大体の方向性は今まで通りで、プラスして柔軟に色々変えていければと思ってます。
今後のTMI総合法律事務所のプライバシー、データ保護チームをどのように前に進めて発展させたいか、意気込みをお願いします。
まだペーペーなので、私が言うのもおこがましいところはあるんですけど(笑)
データ利活用というのは日本に限らず企業が成長していくために必ず必要になるものだと思っています。「データは21世紀の石油」と表現されたりしますが。
まさにそのデータ利活用を支えるインフラとしての法務が重要になるので、それができる法律事務所でありたいと思います。
そのためにも法律に詳しいだけじゃなく、業界に詳しかったり、技術に詳しかったりとトータルでサポートできるような体制が必要だと思いますね。
そうするとカバー範囲が広くなりますし、かつ各国データ保護法まで押さえようとなると、とても1人じゃ無理なので、データ・プライバシーの中でも、さらにそれぞれに強みを持った人というのが集まって、1つのインフラとしてのリーガルサービスの提供できるような、チームになるのが理想です。
大井先生はどのようにお考えですか?
非常に鈴木先生の発想と似ていますけれども、エンジニアだったり、データサイエンティストだったり、技術的にデジタルマーケティングのサービスを生み出すような方がチームに中に入っているのが理想だと思います。
もし難しくても緩やかな提携関係を構築したいと思いますね。TMIP&SもハブとしてデジタルマーケティングやIT領域の様々な企業とコラボレーションしたいと考えています。
技術的なサービスの進化は非常に速いので、特にGoogleやApple動きだったり、デジタルマーケティングのソリューションをキャッチアップしていくためには、広告代理店や広告運用しているようなプレーヤーとのコラボレーションを強化することが重要だと思っています。
以上、今回は、2024年1月にTMI総合法律事務所のパートナー弁護士に就任された鈴木先生をゲストにお話を伺いました。鈴木先生、ぜひ次回もよろしくお願いします(笑)
ありがとうございました。
TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング 代表
TMI総合法律事務所 パートナー弁護士
クラウド、インターネット・インフラ/コンテンツ、SNS、アプリ・システム開発、アドテクノロジー、ビッグデータアナリティクス、IoT、AI、サイバーセキュリティの各産業分野における実務を専門とし、個人情報保護法に適合したDMP導入支援、企業へのサイバーアタック、情報漏えいインシデント対応、国内外におけるデータ保護規制に対応したセキュリティアセスメントに従事。セキュリティISMS認証機関公平性委員会委員長、社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)法律アドバイザー、経済産業省の情報セキュリティに関するタスクフォース委員を歴任する。自分達のサービスがクライアントのビジネスにいかに貢献できるか、価値を提供できるかに持ちうる全神経を注ぐことを信条とする。
TMI総合法律事務所 パートナー弁護士
2012年弁護士登録。個人データの利活用や取引に関する法律問題を幅広く扱っており、大手広告配信事業者への出向経験を活かし、特にデジタルマーケティングの分野の案件を多く扱う。日本の個人情報保護法のほか、CCPAやGDPRを中心に海外法令に関するご相談にも対応。また、IT企業に関するM&AやJV案件を多数手がける。カリフォルニア州弁護士。CIPP(E/US)取得。