匿名加工情報、仮名加工情報などデータ利活用に関わる「情報」の種類を分かりやすく解説

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1.データ利活用における「情報」の種類と具体例

データの利活用を検討する際には、個人情報保護法との関係で、利活用の対象とする情報がどのような類型に該当するのかが重要となります。

データ利活用の対象とする情報の類型としては、以下の4つがあります。

①個人情報

「個人情報」は、たとえば、氏名、住所、生年月日、身長(1cm単位)、体重(1kg単位)などが含まれる個人に関する情報です。

②匿名加工情報

「匿名加工情報」は、たとえば、「①個人情報」を特定の個人を識別することができないように適切な加工を行い、その結果、居住区域(都道府県単位)、生年月(90年以上前を同一の年月に置換え)、身長(10cm単位、上限・下限あり)、体重(10kg単位、上限・下限あり)のみが含まれることになった個人に関する情報です。

③仮名加工情報

「仮名加工情報」は、たとえば、「①個人情報」を他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように適切な加工を行い、その結果、居住区域(都道府県)、生年月日、身長、体重のみが含まれることになった個人に関する情報です。

なお、仮名加工情報は、令和2年6月12日に公布され、令和4年4月1日に施行された個人情報保護法改正法において新設された制度です。

④非個人情報

上記①~③のいずれにも該当しない情報の形でデータを利活用することも考えられます(個人情報保護法上の用語ではないですが、上記①~③のいずれにも該当しない情報のことを本連載において「非個人情報」と呼びます)。

たとえば、東京都における20代男性の平均身長のような統計情報のほか、個人を特定できないオンライン識別子(IPアドレス、MACアドレス、ーCookie ID、広告識別子等)のみに紐付くウェブサイト閲覧履歴のように、個人に関する情報であるものの、①~③のいずれにも該当しないもの(個人情報保護法において「個人関連情報」と定義されています。)が考えられます。

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2.個人情報・匿名加工情報・仮名加工情報・非個人情報に適用されるルール

①個人情報に適用されるルール

「個人情報」については、個人情報保護法17条~40条までのルールが適用されます。

②匿名加工情報に適用されるルール

「匿名加工情報」については、個人情報保護法43条~46条までのルールが適用されることになっており、通常の個人情報よりも相当程度緩やかな規制となっています。

③仮名加工情報に適用されるルール

「仮名加工情報」については、個人情報に該当する仮名加工情報と、個人情報に該当しない仮名加工情報の2種類に分類され、それぞれ異なるルールが適用されます。

事業者が仮名加工情報の作成の元となった個人情報を保有している場合などは個人情報に該当し、仮名加工情報に関するルール(法41条)のほか、通常の個人情報に関するルールが適用されますが、利用目的の変更の制限、漏えい等の報告・本人通知および開示等の請求等への対応などのルールについては適用除外とされています(法41条9項)。

他方、事業者が仮名加工情報の作成の元となった個人情報を保有していないなどの場合は仮名加工情報は個人情報には該当しません。この場合、通常の個人情報に関するルールは適用されませんが、仮名加工情報のルールのみ適用されることになっています。(法41条1項および2項、42条)

いずれにせよ、仮名加工情報に適用されるルールは、通常の個人情報よりも一定程度緩やかな規制となっています。

④非個人情報に適用されるルール

「非個人情報」については、個人情報保護法のルールは適用されません。ただし、「非個人情報」のうち、個人関連情報に該当するものについては、個人関連情報の第三者提供に関する規定(法31条)が適用されます。

適用されるルールまとめ

個人情報個人情報保護法17条~40条
匿名加工情報個人情報保護法43条~46条
仮名加工情報・個人情報に該当する仮名加工情報
→個人情報保護法17条~40条(17条2項、26条、32条~39条は適用除外)、41条
・個人情報に該当しない仮名加工情報
→法41条1項および2項、42条
非個人情報適用なし
※個人関連情報については、個人関連情報の第三者提供に関する規定(法31条)が適用される
個人情報保護法

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3.個人情報とは

「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」(法2条1項1号)、または「個人識別符号が含まれるもの」(同項2号)を指します。

一般に個人情報というと、氏名や住所、生年月日といった特定の個人の識別につながる記述等がイメージされますが、個人情報保護法の定義においては、これらの記述等によって特定の個人を識別することができる「個人に関する情報」全体が個人情報に該当するものとされています。

氏名や住所、生年月日といった記述等によって特定の個人を識別できる場合は、これらの個別の記述等だけでなく、その記述等から識別される個人に関する一切の情報(例:属性情報、行動履歴情報、位置情報)を個人情報として取り扱う必要があります。

また、「他の情報と容易に照合することができる」とは、通常の業務における一般的な方法で他の情報と容易に照合できる状態をいい、事業者の実態ごとに個別に判断されます。

たとえば、単体で特定の個人を識別できる記述等(氏名等)が含まれていないデータベースであっても、会員ID等をキーとして、通常の業務における一般的な方法で、氏名等を含むデータベースと照合することができ、それによって氏名等を知ることができるのであれば、元のデータベースに含まれる情報も個人情報に該当することになります。

個人情報に該当する情報の例としては、以下のような情報が挙げられます。

  • 生年月日、連絡先(住所、居所、電話番号、メールアドレス)、会社における職位または所属に関する情報について、それらと本人の氏名を組み合わせた情報 
  • 個人情報を取得後に当該情報に付加された個人に関する情報
  • 官報、電話帳、職員録、法定開示書類(有価証券報告書等)、新聞、ホームページ、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)等で公にされている特定の個人を識別できる情報

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4.匿名加工情報とは

匿名加工情報とは、個人情報に一定の措置を講じて特定の個人を識別することができないように加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものを指します(法2条6項)。

匿名加工情報の作成にあたっては、単に氏名等を削除するだけでは足りず、匿名加工情報にするために個人情報保護法施行規則34条が定める基準に従って適切に加工する必要があります(法43条1項)。

匿名加工情報は、「個人情報」には該当せず、個人情報に関する規制の対象とはなりません。そのため、匿名加工情報は、個人に関する情報でありながら、本人の同意を得ることなく、特定された利用目的外での利用や第三者への提供が可能になります。

5.仮名加工情報とは

仮名加工情報とは、個人情報に一定の措置を講じて他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工して得られる個人に関する情報を指します。(法2条5項)。

仮名加工情報を作成するときは、施行規則31条で定める基準に従って適切に加工する必要があります(法41条1項)。

仮名加工情報には、個人情報に該当する仮名加工情報と、個人情報に該当しない仮名加工情報があり、これらは他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるか否かによって区別されます。

個人情報に該当する仮名加工情報としては、たとえば、①仮名加工情報の作成者が元の個人情報や削除情報等(仮名加工情報の作成に用いられた個人情報から削除された記述等や加工の方法に関する情報)を保有している場合、②仮名加工情報の受領者があわせて削除情報等の提供を受けた場合(事業承継をした場合、仮名加工情報と削除情報等の保守管理を受託した場合等)が挙げられます。

個人情報に該当しない仮名加工情報としては、たとえば、①仮名加工情報の作成者が元の個人情報や削除情報等を削除した場合、②仮名加工情報の受領者が仮名加工情報のみを取得した場合が挙げられます。

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6.非個人情報とは

上記以外の情報としては、生存する個人に関する情報であるものの個人情報、匿名加工情報および仮名加工情報のいずれにも該当しないもの(個人関連情報)や、統計情報のように個人との対応関係が排斥された情報が考えられます。

具体例として、たとえば、複数人の個人情報を機械学習の学習用データセットとして用いて生成した学習済みパラメータは、当該パラメータと特定の個人との対応関係が排斥されている限りにおいては、「個人に関する情報」ではないとされているため(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(以下、「個人情報保護法QA」という。)1-8)、個人との対応関係が排斥されており、個人情報保護法の適用対象外となります。

また、カメラ画像から抽出した性別や年齢といった属性情報や、人物を全身のシルエット画像に置き換えて作成した移動軌跡データ(人流データ)は、抽出元の本人を判別可能なカメラ画像や個人識別符号等本人を識別することができる情報と容易に照合することができる場合を除き、個人情報には該当しないとされています(個人情報保護法QA1-12)。

今回のコラムでは、匿名加工情報や仮名加工情報などデータ利活用に関する「情報」の種類について解説しました。次回以降では、それぞれの情報に関するルールについて深堀をしていきます。

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